アンティークコラム

アンティークの銀製品とホールマーク

アンティークの銀製品と「ホールマーク」

今回はアンティークの銀製品のことをちょっとお話ししたいと思います。
特に、昔から世界に誇る品質を保っているイギリスの銀製品について見ていきます。
イギリスに行くと、必ずと言っていいほど銀製品を目にします。

イギリスでは数百年も前からそれらに慣れ親しんできたのです。
さて、銀製品をよーく見てみると、なにか刻印が打ってあるのが分かります。これは「ホールマーク」とい名前で、簡単にいうと品質保証マークです。このマークがないと金や銀の製品としての品質を認められません。

 

イギリスで1975年に施行された「ホールマーク法」により、地域によって少し違いのあったホールマークのデザインが全国で統一されました。そして国内の銀製品には、必ずホールマークを押すことが定められました。

ホールマークを刻印することのできる機関「アセイ・オフィス」は国によって決められており、現在イギリス国内に4つあります。ロンドン・オフィスを筆頭に、バーミンガム・オフィス、シェフィールド・オフィス、そしてエディンバラ・オフィスです。マークはオフィスごとに違うので、どこで鑑定された製品なのかがすぐに分かります。隣に刻印される日付を表すマークなどまで読めれば、その製品の品質・年代・製造地などが分かるというわけです。つまり、12世紀以降に作られたイギリスの銀製品のほとんどは、いつ誰がどこで製造したのかが分かるということなのです。
刻印されるホール・マークは基本的に5つあります。メーカーズ・マーク、スタンダード・マーク、ファインネス・マーク、タウン・マーク、そしてデート・レター。
それでは、具体的にどうすればホールマークが読めるのでしょうか。それぞれ具体的にみていきましょう。

 

■メーカーズ・マーク
これで作った職人や工房が分かります。職人や工房のイニシャル2文字の場合が多いです。

 

■スタンダード・マーク
純度92.5%の純銀(スターリング・シルバー)であるという印。横を向いたライオンのマークです。

 

■ファインネス・マーク
シルバーの純度を表すマークです。
800 純度80% ジャーマン・シルバー
925 純度92.5% スターリング・シルバー
958 純度95.84% ブリタニア・シルバー
999 純度99.9% ピュア・シルバー
それぞれこんな風に呼ばれます。

 

■タウン・マーク
どこのアセイ・オフィスで鑑定されたかが分かります。
タウンマーク

・錨(いかり)
バーミンガム・アセイオフィス。銀製品の名産地だったことから1773年に創立されました。ちなみに、錨マークが横向きになっていればその品物はゴールドかプラチナです。

・ ヒョウ
ロンドン・アセイオフィス。1327年にイギリスで初めて専門の鑑定機関として承認されたオフィス。1697〜1719年は横向きのライオンのマークでした。

・バラ
シェフィールド・アセイオフィス。1974年までは王冠のマークを使用していました。

・ 城
エディンバラ・アセイオフィス。15世紀半ばから銀の鑑定をしている老舗です。

 

■デート・レター
製品が鑑定を受けた年がわかります。デート・レターはアルファベットが刻まれます。AからZまでを使い、同じアルファベットでも大文字や小文字、デザイン、枠の形などで区別して年号を表しています。
実は、デート・レターは最初からあったわけではありません。1400年代の後半、質の悪い製品へのクレームが続いたので、それが何年に鑑定を受けた製品か分かるように打たれ始めたのです。ただしロンドン以外のオフィスでは、1999年から無くなってしまいました。昔と違って、もう品質の心配をする必要がなくなってきたということなのかもしれません。

 

メーカーズ・マークとデート・レターの2つは、その種類がものすごく多いので、興味のある方にはAmazon等で1000円ほどで買えるホールマークの種類を図解した本がお勧めです。ここunikkにも「Dealer Guides English Silver Hall-Marks」という本が置いてあります。
このように、たった5つの刻印に膨大な情報が込められているのが分かります。

これらの刻印があるからこそ、イギリスの銀製品の品質が保証され、ホールマークの解説書さえあれば、誰でもその製品ができた年代や場所、品質、作者を知ることができるのです。
こうして何数百年もの間、品質管理を徹底していた歴史がイギリスの銀製品への信用を高めているのです。

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