JAZ社アンティーク時計〜マークの意味と製造年代の見分け方〜
今回は、unikkでも人気の高いJAZ社の時計についてお話ししたいと思います。
JAZの時計はフランス映画「アメリ」に登場したことでも有名です。
映画ではこんな感じでベッドサイドテーブルに置かれていました。
時計メーカーJAZは1910年パリで生まれ、これまでたくさんの優れたデザインの時計を世に送り出してきました。コレクターにも人気が高いJAZ社の時計、そのトレードマークといえばあの小鳥です。小鳥のマークが生まれたのは1941年ですが、その背景には複雑な事情がありました。
“JAZ”というブランド名は、英語のJAZZ BANDから来ているのですが、それが第二次世界大戦中に問題となりました。
1940年、ナチス・ドイツによるフランス侵攻とフランス第三共和政政府の崩壊によってフランス占領が始まりました。占領下のフランスはナチス・ドイツによる四カ年計画に基づき、経済的支配を受けました。
当時、枢軸国であるナチス・ドイツの占領下にあったフランスで、敵対する連合国のアメリカ発祥のジャズに由来するブランド名は許されず、長年親しまれてきたJAZというブランド名が使えなくなってしまったのです。
そこで、“JAZ”という名前を出さずに、JAZの時計だと分かるようにする必要がありました。
その時に考案されたのがこの小鳥。この小鳥は「キレンジャク」というスズメ科の鳥です。この鳥が選ばれたのは,キレンジャクのフランス語名が“Jaseur de Bohème”(ジャズ・ド・ボエム)だからです。つまり、「これはアメリカ音楽の“JAZ”ではなく、鳥の名前の“JAZ”だ!」という風にごまかしたのです。
そうして戦時中、この小さな鳥がJAZというブランド名の代わりを務めたのでした。その名残として、JAZの時計には小鳥のマークが付くようになりました。
これがキレンジャクです。シュッとしていて格好良いですね。キレンジャクは渡り鳥で、冬には日本にも飛んでくるそうです。チリチリチリと鈴を振るような声で鳴くとか。偶々とはいえ、目覚まし時計にはぴったりの鳥ですね。
ちなみに、JAZの時計は鳥のマークの違いで作られた年代がわかります。実際にunikkにあるJAZの時計で見てみましょう。
1910~1940年 JAZの文字のみで鳥のマークがありません。
1941~1967年 鳥のしっぽが下向きです。
1967~1975 鳥のしっぽが上向きです。
このように、見分け方はとても簡単です。
アンティークショップなどでJAZの小鳥のマークを見かけたときには、JAZの辿ってきた当時の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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